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「ぼくらのQ」/ジャンプNEXTで哲学したらいい

遡りますが…3月13日発売のジャンプNEXTをひょんなことから買って読み。

読むの楽しい、新人さんのマンガ!未完成だからこそのワクワク感。

圧倒的にスゲー!と思うものはなかなかなくて、絵はキレイ!とかストーリー面白そう!とかキャラがかっこいい!とか。どれも、惜しいな、これから頑張ってほしいなという気になる、未完成だからこそ、ある一部分の特殊な魅力、漫画家さんの得意なことや描きたいことがぴかっと光って見えるように感じる。それに「連載を予感させる読み切り」だから、どれも完結してるけど、続きが気になってしょうがない。

というのが2か月前の話…。(昨日最新号出ましたね。買おうかな)

 

そして先月、この本を読んだ話。鬼界彰夫「生き方と哲学」。

生き方と哲学

生き方と哲学

 

 これは1年半前に会社を辞めて、ある読書家の演劇プロデューサーさんに出会い、「何か一冊オススメを」とお願いしたところ貸して下さった本。演劇マネジメント系の本かと思ったら「生き方と哲学」だから、私は転職したけど別に生き方に悩んではいないけどな(苦笑)と思いつつ、哲学は興味領域なのでありがたくお借りした。

そして前半はすらすらと読んだのだが、中盤で止まってそのままになっていたのだ。

「生き方とは何か?」ということを、身体の動かし方なのかとか、時間の使い方なのかとか、社会での立ち位置のことなのかとか、さまざまな切り口から噛み砕いてすり潰して解説してくれる本。ここで書かれていることには全面的にアグリーだ、ただしなんの考察も自分に湧かないのが止まってしまった原因。哲学というよりは、論理学な印象。「生きる」「生き方」という言語をばらばらにして整理して並べ直しているような内容で、「どう生きるのがよいか」「こう生きるべきなんだろうか」「私の場合はこう生きる」というような主観によった独自主張は書いていないため。

私が哲学者を好きなのは、客観的な言葉・主観的な感覚をまぜこぜに持っていてどちらも強いからだ。カントが好きなんだが、それは彼が醒めた視点で小難しく批判哲学なんてものを展開しておきながら、「それについて考えるほどに深い敬愛が湧き、私を満たすものが2つある。1つはわが上なる星空、1つはわが内なる道徳法則」とかロマンティックな表現でも言いきっちゃうところ。つまり…ある意味宗教、あるいは文学と近くて全然いい、哲学も。

 

そして、1か月前のジャンプNEXTを思い出したんです。

「ぼくらのQ」市真時系。

http://www.shonenjump.com/j/jumpnext/_image/2015_1/new07.jpg ジャンプ公式サイトより

 

ごく平凡だけどやや投げやりで死にたがりな主人公が、「どうして僕は生きているのだろう」とふと思った日から、『生命のQ』という謎の球体がつきまとう。

そして彼に問い続ける。“なぜケガをするのか?”とか。そして正解するとボーナスとして体がちょっと丈夫になる。

そして質問はカウントダウンしていき、“第一問。人はなぜ生きる?”。

これが正解できない。

「死にたくないから」でもない。「誰か他の人のためになるから」でもない。

(…これ、本当に正解させるつもり…できんの??その話長くならないorチープにならない大丈夫?っていうか『他の人のため』でいいんじゃないの少年漫画だし違うの?ってハラハラしていた)

 

が、『死のQ』を持った通り魔殺人犯や、自分の替わりに昔大けがをした幼馴染のことなんかを考えて、主人公は正解する。

答えは、

 

 

“人が生きるのは

 そこに世界があるからだ”

 

 

 

この台詞、

感動した。

 

 

 

生きる理由なんてない。というほど苦々しくもないけど、人を愛するため。とか、何かを成すため。というほど、空々しくもない。シンプルで気持ちよかった。たぶんこれ、時代の気分にも合ってる。

 

こんなの、少年がマンガで知るには重いんじゃないだろうかとびっくりしたのだけど。でもたぶんマンガでないと、マンガだからこそ言えてる表現。

どんな専門家の難しい説明も流麗な文学も、身近な人の助言や説教も、マンガの親近感にはある意味かなわない。

 

人が生きるのは、そこに世界があるからだ。

こんなことまでマンガは教えてくれるんだな。誰にでも。