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1st Ticket

Not for theatergoers

mizhen「夜明けに、月の手触りを」「Sの唄」「愛の漸近線」/女の幸せについての新しいポジティブ

STAGE MUSIC LITERATURE

「いちばん注目している若手劇団は?」と聞かれたら

ミズヘン!」と答えています。

 

ひょんなことから所属女優の佐藤蕗子さんと知り合いまして、

まず「Sの唄」を観ました。

 

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(公式HPより/撮影・高倉大輔)

 

 

これがもう、凄まじかった。

脚本も俳優も演出も。

 

会場はライブハウスで、一人芝居なのだが彼女の最後のライブでもある。

 

彼女は親友「S」との出会い、彼女のおかげで音楽を続けられたこと、生きてこられたこと、でもうまく生きられないことを語りだす。

パフォーマンスなのかイメージシーンなのか曖昧な歌をはさみつつ、

この歌声が、よくて。

 

語って語って語って

そして今、この“舞台上に立っていて、観客に「S」を語っている”につながって、

彼女がつき続けた嘘が明かされた。

 

 

これは凄い素晴らしい、この人絶対売れる!と、とにかく他の戯曲も読みたいと、会場で「夜明けに、月の手触りを」の戯曲を買いました。

・・・が、ちょっとそのままにしちゃってて、

先に最新作「愛の漸近線」を観に行きました。

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(公式HPより/撮影・高倉大輔)

 

会場が「小金井アートスポット シャトー2F」という、マンションに隠れ家のように存在するアーティなカフェ・ラウンジ・ギャラリースペースで、

打ちっぱなしの部屋に、住居らしきラインを引いて、客席はゆるく取り囲む40席程度のスタッキングチェアで、なんだか同い年くらいの男性客が多めで内容的にやや恥ずかしく(笑)、そのこそこそ、くすくす感がとても気持ちよかったなあー。

ていうかオフィシャルの写真いいなあ。目の付け所が。つま先のアップとか(笑)

 

ひょうきんな妻と、妻に隠れてラブドールと二重生活している夫と、隣に住むチャットレディと、彼女に恋するネットストーカー風男子をめぐる、とにかく性!性の話。

ラブドールや、チャットレディや、ハプニングバーの描写が大変リアルでほどよく恥ずかしかった(これは作者の方はかなり綿密な取材をされたのか…? そんな意味でもハラハラしたw)ですが、

そういう、こっぱずかしさ、とか、情けないみっともない人に言えない、とか

目を背けたくなるくらい目が離せない、それがラブリーに描かれていたな。みんなとても可愛らしかった。

 

それで、2013年の芸劇の企画「God save the Queen 」を観た時のことを思い出した。

これは20~30代の若手女性劇作家の短編を5本まとめて観ましょうという企画で、「うさぎストライプ」「タカハ劇団」「鳥公園」「ワワフラミンゴ」「Q」が出ていました。

そして、全体的にあまり好きでなかったのですね。特に気になったのが5本中3本?が性に関してコミカルに描くシーンがあったと思うんだけど、それがおもしろくなかった。同世代だから逆に生々しかったのか、なんだかデフォルメのしかたが知的に凝ったマンガを描こうとしているような違和感があって、その印象が残ってしまった。

 

それに対して、藤原佳奈さん流の、女性目線の性愛、ってなんて率直でサバサバしてて愛があって可笑しいんだろう!と。

 

で、ようやく読みました「夜明けに、月の手触りを」。

いま、まさに劇作家協会新人戯曲賞の最終候補に残っていますね!!注目されて嬉しいなあ。

これが一番ふるくて、2013年のものなんだけど。

 

アラサー未婚女子×5=「転職を繰り返す派遣社員」「アイドルにはまる保育士」「広告代理店で働くデキる女」「細胞を研究する大学院生」「関西から上京した女芸人」

の話で、なんだかそれが・・・予想通り少しみじめなんだけど、

予想よりもちょっと劇的に何かを得たり失ったり変わらなかったりする。

 

この作品はモノローグから、電車内に居合わせていたり、でも音楽を大音量で聴いて自分の世界に浸っていたり、公園で男と話していたり、それをファミレスから眺めていたり、マンションのベランダから眺めていたりと、時間と空間がゆるやかにつながりながら、ジャンプというか、画面をスクロールしていくような展開がおもしろい。

ミニシアターでやってるドキュメンタリー調のインディーズ映画のようですね。

 

どうやって上演したのかとても気になるところ!と思っていたらこんな写真が

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(公式HPより/撮影・奥山郁)

 

どうやって上演したの!かめはめ派女子高生みたいになってるよ!!笑

白舞台の写真もいいなあ。北品川フリースペース楽間というと、こちらもせいぜい30席くらいの会場。

 

そういえばmizhenはモノローグ多いですね。それも語りすぎず流れ過ぎない。小説の地の文みたいに、さらさらと進んでいく独り言。

そして少し妄想が、ぬるく沸騰しはじめると、歌ったり踊ったりしちゃうの(笑)

特に“作者寄り”なセリフを語る役はいつも佐藤蕗子さんだと思うのですが、彼女単体としても女優さんとして好き。

とても巧くて感情も強いし、声がほどよく低いし、歌が上手いし、何より顔がイイ!!

彼女の、色っぽい美人とも、普通にどこにでもいそう(ごめんなさい)とも取れる、絶妙なルックスがmizhenが描く女性の親近感とラブリーさをつくっているのかもな。

 

この戯曲を読んで、私はものすごい女性らしくて情が深くてちょっとクレイジーな女性を描く女性作家さん、例えば本谷有希子さん、例えば京都の劇団「魚灯」の山岡徳貴子さん、あとある意味で椎名林檎さん、ってすごく好きなんだけど、さらにむしろ男子目線に振り切ったエロさを描ける「モテキ久保ミツロウさんとかも好きなんだけど、いま、一番自分に近いところにいてくれるのは藤原佳奈さんかもなーと思いました。

 

たぶんもう、アラサー女子って勝ち負けとかよくわからなくて

「恋愛成就」「結婚・出産」「女性らしさ」「美しさ」「性的満足」「経済力」

なにが女の幸せって、かつてはもっと一貫してたはずなんだけど、

最近は、そんなに要らないものと、必要なものと、あったほうがいいよって言われてるものがバラバラしてて、

でもなんでも選べるものでもなくて。。

さらに先輩や友達や男性とも、その選び方をぜんぶ一致させてわかりあえるなんてこともなくて。

もやもや・いらいらせざるを得ないのかも!

 

 しかもそれやっぱゴールとかなくて、ゆるやかに状況や性格が変わっていくのに、うまく合わせて乗っかっていくんだろうなあ、という、

ある時に最高の幸せが訪れるのではなかろう、という…諦めというか悟り…というか、次世代のポジティブをゲットするしかないな、という。

そんな自分の価値観を再認識しました。

 

今後もとっても期待!mizhen!