1st Ticket

Not for theatergoers

ナショナル・シアター・ライヴ2014 『リア王』

周りにイギリス演劇ファンが多いのだけど、本場の作品を見たことなかったので、これ行ってみた。
ナショナル・シアター・ライヴ2014 『リア王

それでも『リア王』なら、確か演出違いで4本めくらい。意外と見てる。。やっぱりこの戯曲面白い。本当によく出来た群像劇で、キャラの濃さとそれぞれのドラマの決着が鮮やか。(かなり死ぬが)

あらすじだと「老いた王と3人の娘の話」になっちゃうから面白く聞こえない(色気たりない)けど、シェイクスピア入門はリアがいいと思う。展開のテンポが早いし、目潰しとか飛び降りとかどうやったって視覚的にドキドキするシーンがあるから。
演出では「エドマンド」と「道化」のつくり方にかなり違いが出て面白い。
これまで見たのは、エドガー(裏切られる兄)が優等生のお坊ちゃん、エドマンド(裏切る弟)がワイルドな二枚目が多かったけど、今回は真逆だった。理系男子風エドマンド、強烈なインパクトあった。
道化も、まさかなタイミングで死ぬ演出、お見事だった。
(でもキャラでいうと、中屋敷さんverの愛人らしき女道化が好き)
そして、今回初めて涙が出た。
リア王が素晴らしかった。
実はいつも中盤の、リア王が発狂するあたりが苦手で。筋の通らない罵倒が続くから疲れてしまうのだけど…
とても繊細に、迷いながら、追い詰められて、狂っていく様子が、現代的で人間的だった。
演じたサイモン・ラッセル・ビールは医者の家系で、親戚が「リア王レビー小体型認知症」という説を見つけて、症状など演技にとりいれたらしい。
その、自分の感情と肉体がコントロールできず苦しんでいる感じ。「発狂」という一辺倒じゃなくて、正気と精神障害の間を揺れているピュアなおじいさんなんだと思えた。リーガンの裏切りでスイッチが入り、トム(エドガー)との出会いで向う側に行ってしまい、コーディリアの死で完全に血管が切れる流れ、とても丁寧に見えた。
うわさ通り、ナショナル・シアターの『もっともハイレベルな俳優が集まっている』感も画面越しによく伝わってきた。演技・演出に確信がみなぎっている。
上映最終回だったから満員だった。この前の上映の『ザ・オーディエンス』も評判良かったしなぁ、見ればよかった。