1st Ticket

Not for theatergoers

パルコ・プロデュース「国民の映画」

パルコ・プロデュース「国民の映画」
観てきました。


『なんだか三谷さんぽくない』と思ったのは、さまざまなエピソードがパズルがはまるようにエンディングに向かって大団円、というウェルメイド感がなかったことと、主人公が心から客に好かれはしない歴史的に“悪いやつ”だから。

つまり三谷さんコメディって「そんなにうまくいくわけないじゃん!(笑)」みたいな面白カタルシスがあるイメージだけど、これは何も絵が仕上がらないまま終わる。ただ、リアリティのある話かというとそうでもなく、人物や行動にデフォルメはかかっていて、そこに描きたかったものが宿ってるのだと思う。
芸術、権力、思想、経済、才能、評価、キャリア、その距離感。「笑の大学」よりももっと複雑な関係性。
だけど現実はきっともっと複雑だったし、表立って現れなかった色々な立場があったはず。
そして根本的には今の時代も、日本でもこの複雑な関係は続いてる。
芸術を愛するとは、
作品を作ることなのか? 作品にお金を費やすことなのか?
才能を守ることなのか? 才能を使うことなのか?
というのは今自分にとっても身近な話題。
・・・みたいなことを考えました。
「お芝居のチケット代は、2時間の現実逃避の対価」みたいな感覚もありますが、
こういう後味の悪い作品ほど、観終わった後の人生にこそ長く、課題として残る気がします。