ナイロン100℃「消失」/虚しくて涙も出ない
「どんどん壊れていくのに、新しく生まれてはこないんですよね」
という台詞が秀逸で、絶望を串刺しにして一皿にまとめたみたい。
今年はもう悲しい作品は見れそうにない気分…。
でもまた再演されるだろうな。
SFがフィクションでなくなっていく、しかも望んでないことばかりが身近になっている感じ、さいきん多い。
隣の席の女性二人連れが、
「これは架空の国の話だよ」
「そうなの?未来か、過去の話だと思った」
と話していたのがおもしろかった。
下北沢・本多劇場にて。12/27まで。
mizhen「夜明けに、月の手触りを」「Sの唄」「愛の漸近線」/女の幸せについての新しいポジティブ
「いちばん注目している若手劇団は?」と聞かれたら
「ミズヘン!」と答えています。
ひょんなことから所属女優の佐藤蕗子さんと知り合いまして、
まず「Sの唄」を観ました。
(公式HPより/撮影・高倉大輔)
これがもう、凄まじかった。
脚本も俳優も演出も。
会場はライブハウスで、一人芝居なのだが彼女の最後のライブでもある。
彼女は親友「S」との出会い、彼女のおかげで音楽を続けられたこと、生きてこられたこと、でもうまく生きられないことを語りだす。
パフォーマンスなのかイメージシーンなのか曖昧な歌をはさみつつ、
この歌声が、よくて。
語って語って語って
そして今、この“舞台上に立っていて、観客に「S」を語っている”につながって、
彼女がつき続けた嘘が明かされた。
これは凄い素晴らしい、この人絶対売れる!と、とにかく他の戯曲も読みたいと、会場で「夜明けに、月の手触りを」の戯曲を買いました。
・・・が、ちょっとそのままにしちゃってて、
先に最新作「愛の漸近線」を観に行きました。
(公式HPより/撮影・高倉大輔)
会場が「小金井アートスポット シャトー2F」という、マンションに隠れ家のように存在するアーティなカフェ・ラウンジ・ギャラリースペースで、
打ちっぱなしの部屋に、住居らしきラインを引いて、客席はゆるく取り囲む40席程度のスタッキングチェアで、なんだか同い年くらいの男性客が多めで内容的にやや恥ずかしく(笑)、そのこそこそ、くすくす感がとても気持ちよかったなあー。
ていうかオフィシャルの写真いいなあ。目の付け所が。つま先のアップとか(笑)
ひょうきんな妻と、妻に隠れてラブドールと二重生活している夫と、隣に住むチャットレディと、彼女に恋するネットストーカー風男子をめぐる、とにかく性!性の話。
ラブドールや、チャットレディや、ハプニングバーの描写が大変リアルでほどよく恥ずかしかった(これは作者の方はかなり綿密な取材をされたのか…? そんな意味でもハラハラしたw)ですが、
そういう、こっぱずかしさ、とか、情けないみっともない人に言えない、とか
目を背けたくなるくらい目が離せない、それがラブリーに描かれていたな。みんなとても可愛らしかった。
それで、2013年の芸劇の企画「God save the Queen 」を観た時のことを思い出した。
これは20~30代の若手女性劇作家の短編を5本まとめて観ましょうという企画で、「うさぎストライプ」「タカハ劇団」「鳥公園」「ワワフラミンゴ」「Q」が出ていました。
そして、全体的にあまり好きでなかったのですね。特に気になったのが5本中3本?が性に関してコミカルに描くシーンがあったと思うんだけど、それがおもしろくなかった。同世代だから逆に生々しかったのか、なんだかデフォルメのしかたが知的に凝ったマンガを描こうとしているような違和感があって、その印象が残ってしまった。
それに対して、藤原佳奈さん流の、女性目線の性愛、ってなんて率直でサバサバしてて愛があって可笑しいんだろう!と。
で、ようやく読みました「夜明けに、月の手触りを」。
いま、まさに劇作家協会新人戯曲賞の最終候補に残っていますね!!注目されて嬉しいなあ。
これが一番ふるくて、2013年のものなんだけど。
アラサー未婚女子×5=「転職を繰り返す派遣社員」「アイドルにはまる保育士」「広告代理店で働くデキる女」「細胞を研究する大学院生」「関西から上京した女芸人」
の話で、なんだかそれが・・・予想通り少しみじめなんだけど、
予想よりもちょっと劇的に何かを得たり失ったり変わらなかったりする。
この作品はモノローグから、電車内に居合わせていたり、でも音楽を大音量で聴いて自分の世界に浸っていたり、公園で男と話していたり、それをファミレスから眺めていたり、マンションのベランダから眺めていたりと、時間と空間がゆるやかにつながりながら、ジャンプというか、画面をスクロールしていくような展開がおもしろい。
ミニシアターでやってるドキュメンタリー調のインディーズ映画のようですね。
どうやって上演したのかとても気になるところ!と思っていたらこんな写真が
(公式HPより/撮影・奥山郁)
どうやって上演したの!かめはめ派女子高生みたいになってるよ!!笑
白舞台の写真もいいなあ。北品川フリースペース楽間というと、こちらもせいぜい30席くらいの会場。
そういえばmizhenはモノローグ多いですね。それも語りすぎず流れ過ぎない。小説の地の文みたいに、さらさらと進んでいく独り言。
そして少し妄想が、ぬるく沸騰しはじめると、歌ったり踊ったりしちゃうの(笑)
特に“作者寄り”なセリフを語る役はいつも佐藤蕗子さんだと思うのですが、彼女単体としても女優さんとして好き。
とても巧くて感情も強いし、声がほどよく低いし、歌が上手いし、何より顔がイイ!!
彼女の、色っぽい美人とも、普通にどこにでもいそう(ごめんなさい)とも取れる、絶妙なルックスがmizhenが描く女性の親近感とラブリーさをつくっているのかもな。
この戯曲を読んで、私はものすごい女性らしくて情が深くてちょっとクレイジーな女性を描く女性作家さん、例えば本谷有希子さん、例えば京都の劇団「魚灯」の山岡徳貴子さん、あとある意味で椎名林檎さん、ってすごく好きなんだけど、さらにむしろ男子目線に振り切ったエロさを描ける「モテキ」久保ミツロウさんとかも好きなんだけど、いま、一番自分に近いところにいてくれるのは藤原佳奈さんかもなーと思いました。
たぶんもう、アラサー女子って勝ち負けとかよくわからなくて
「恋愛成就」「結婚・出産」「女性らしさ」「美しさ」「性的満足」「経済力」
なにが女の幸せって、かつてはもっと一貫してたはずなんだけど、
最近は、そんなに要らないものと、必要なものと、あったほうがいいよって言われてるものがバラバラしてて、
でもなんでも選べるものでもなくて。。
さらに先輩や友達や男性とも、その選び方をぜんぶ一致させてわかりあえるなんてこともなくて。
もやもや・いらいらせざるを得ないのかも!
しかもそれやっぱゴールとかなくて、ゆるやかに状況や性格が変わっていくのに、うまく合わせて乗っかっていくんだろうなあ、という、
ある時に最高の幸せが訪れるのではなかろう、という…諦めというか悟り…というか、次世代のポジティブをゲットするしかないな、という。
そんな自分の価値観を再認識しました。
今後もとっても期待!mizhen!
鳥公園「緑子の部屋」/誰も、誰かのすべてを知らない
もし私がいなくなって、なぜか兄と元彼と中高の友達が集まってしまったら、こんな風に「あいつってそういうとこありましたよね」なんて話をして、わかったりわからなかったりするのかなあ(でもきっとそんなことはないだろうなあ)と、思いました。
今まで言われたことのある「あなたってそういうとこあるよね」を思い出しても、やっぱりどれも違うことを言っていたし。違和感の強い、ほとんど真逆みたいな言葉も覚えている。
そして私はいないんだから、もはやそのもやもやは本人のものではなくて。
残された人の中に、あったことや、あるかもしれなかったことが、ごっちゃになって、ほとんどの細かいことは忘れていて、
たぶん人ひとりのことをまじめに全て思い出したり知ったりするのは複雑すぎるから、
結局ほとんどのことは、見てみないふりになってしまって、それを人は悲しいと思うんだなあと、思います。
最近ようやく「現代口語演劇」風な作品が、自分の同世代の言葉として聴こえるようになってきたなぁ…
舞台開いた瞬間は、ハイバイ「霊感少女ヒドミ」を思い出した。
背面パネル全面のマッピング。
ハイバイ「霊感少女ヒドミ」
(C)曵野若菜
あと中央垂れている室内のシーリングライト、
になんだか既視感が。
途中から出て来るベッドには今春見たキムラ企画での、既視感が。
こういう「ワンルームもの」のビジュアル的なアソビは
なんか更新が滞っているな…と感じます。
知ってるようで知らない、ありそうでありえないワンルームが観たい。
「Burlesque」/女性の身体が世界で一番美しい
アートが一番盛り上がる秋シーズン・・・
超満喫してるうちに楽しんでるうちにあいてしまいました。。
特に9月・越後妻有トリエンナーレでボランティアしたり
11月・韓国 光州&ソウル大学路に劇場視察行ったりと
膨大にネタがある分 まとめきれず。
とりあえず韓国からの機内で見た「Burlesque」にたいへん興奮したので貼っておく!
いまだにリピートしてしまうのがやっぱりこの曲。
1分18秒からの振付のえろさ、神がかってると思う!
映画というか、アギレラのパフォーマンスとして見応えMAX、声も身体もグラマラスで高まる。
映画としては、アイオワの田舎を捨てて出てきたアギレラ演じるアリが
バーレスクのパフォーマンスに魅入られて、スターになっていくという
いたってシンプルなシンデレラストーリー。
なんだけど、主人公がバーレスクと出会うこのシーンの説得力がありすぎて、
いっきにコッチの世界に引き込まれてしまった。
シェールのリップにクラクラしてしまいます。
鍛えられた女性の身体と表情って、ほんと美しい・・・。
このくらい踊り狂えたらどんなにイイか!!
バーレスクといえば、日本では「紫ベビードール」が素敵なんですよね~。
FUJIROCKの常連でもあります。
12/13にワンマンあるので行きたいな~。
メンバーのCoppelia Circusさんは個人的に知り合いなんですけども
見て下さいこの肉体美。(特に背筋がやばいです)
男女問わず魅了するセクシーさってありますよね。
同じ人間とは思えないくらい。目を奪われる。
磨かれた身体はそれだけでクリエーションとして成り立っているわ。
「だれも知らない建築のはなし」/絶望的な前向き
「だれも知らない建築のはなし」@シアターイメージフォーラム
やーこれは・・・
絶望的におもしろかった!
思ったよりわかりやすく、
70年代から次期オリンピックまで日本建築の動きをざーっとさらってる。
しかし想像以上に、みんな絶望してる!
国内外のジャーナリストが
「建築が社会を変えることはできない」と口をそろえる。
名だたる建築家が
「もはや建築家は必要ない。政治経済とコンピューターが建築を作る時代」と自嘲する。
「コミュニティデザインのトレンドは建築家を“従属的プロフェッショナル”に育てる」
「アーキテクトがいらない今、建築家はエンジニアであるべきか、テクノクラートであるべきか、アーティストであるべきか」
なんて話もおもしろく。
人を災害から守ったり、
人の動線を流したり呼び込んだり、
人を街を一番物質的に支配しているのは建築デザインのはずなのに、
もはやそのデザイナーたちが、影響力において情報デザインへの敗北を感じ始めているのではないかと。
全体通して日本の終末観すら漂う、後味の悪さ(笑)
でも、みな批判的なだけで、圧倒的に前向きでもある人種だなと、建築家の方々は。
もともとヴェネツィア・ビエンナーレの日本ブース用につくられた映像ということもあり、パンフレットも小品ながらなかなかアカデミックで濃い。
作品中に膨大な日本の建築が出て来るけども、そのアーカイブとしてもありがたい。
これを見たら、あれ、熊本に行かなきゃいけないなこれはという気になる。
ていうか建築ってそんなに九州がアツイの!というびっくり。
あとこれとか凄いね…
ほとんど知らないけど、なんか図表にされるとすごくワクワクするね!
シアター・イメージフォーラムのフェスティバル・ディレクター山下宏洋さんと、石山友美監督の対談も読みごたえある。
建築、と、映画、との接点
っておもしろい。
私は演劇畑から出て来て、特に劇場が好きでどうやら建築も好きで、
なにか建築には、今まで通ってこなかったけど、たぶん裏表みたいな
実はかなり親密なジャンルなんだろうと感じている。
空間をつくる
と同時に
時間をつくる
そして
人間の、関係性をつくる
というところとか?
かなり総合的・複合的で危険で本質的で役立つものだけど
美しくても、美しいだけでは残っていけない
制作者と客が、分断されている けど、 完全には無関係でいられない
というところかなあ。